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東京地方裁判所 昭和55年(行ク)56号 決定

東京都文京区関口一丁目三六番一号

申立人

平沢新三郎

右訴訟代理人弁護士

高橋融

井上幸夫

今野久子

東京都文京区春日一丁目四番

相手方

小石川税務署長

右指定代理人

布村重成

塚本晃康

石津延

佐々木正男

加藤広治

右当事者間の文書提出命令申立事件(本案・当庁昭和五三年(行ウ)第四二号所得税更正賦課処分取消等請求事件)につき、当裁判所は次のとおり決定する。

主文

本件申立てをいずれも却下する。

理由

一  本件申立ての要旨

申立人は、民事訴訟法(以下「法」という。)三一二条三号後段の規定に基づき、四谷税務署長の所持する左記〈1〉、〈2〉、〈3〉〈ア〉の各文書及び国税不服審判所長の所持する左記〈3〉〈イ〉の文書の提出命令を求める。

〈1〉  佐藤静雄及び谷至弘の各作成にかかる申立人に関する所得税調査報告書

〈2〉  原進午作成にかかる申立人からの所得税更正及び過少申告加算税賦課決定に対する異議申立調査報告書

〈3〉  審査請求人・申立人、原処分庁・相手方間の国税不服審判所東裁(所)五二第四九九号裁決事件における

〈ア〉  国税通則法九六条一項により原処分庁が提出し、返還を受けた「処分の理由となった事実を証する書類その他の物件」

〈イ〉  国税通則法九七条により担当審判官が行なった審理の記録

二  相手方の意見の要旨

本件申立ては、(一)申立てにかかる文書(以下「本件文書」という。)〈3〉については「文書ノ表示」、「文書の趣旨」の記載に欠け、また本件文書すべてにつき「証スベキ事実」の記載を欠くから、法三一三条に違反する。(二)本件文書は法三一二条三号後段の文書に該当しない。(三)行政庁である国税不服審判所長は文書提出命令を受ける第三者たりえない。(四)本件文書〈3〉〈ア〉については文書提出命令の必要性がない。よって本件申立てはすべて却下されるべきである。

三  当裁判所の判断

(一)  本件文書〈1〉、〈2〉は、いずれも原処分庁の担当職員が本件更正及び異議申立事件の事務処理の便宜上専ら自己使用のため作成した内部資料に過ぎないことが明らかであるから、法三一二条三号後段の文書には当たらないものというべきである。

(二)  本件文書〈3〉につき本件申立ては、提出を求める文書の特定が不十分であって「文書ノ表示」に欠けるものであり、また、「文書ノ趣旨」も明らかでないから、法三一三条に違反する不適法な申立てというべきである。

(三)  よって本件申立てをすべて却下することとし、主文のとおり決定する。

(裁判長裁判官 時岡泰 裁判官 満田明彦 裁判官 揖斐潔)

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